ハラガク

の、ブログ

幼心ながらに興ざめした思い出

ぼくは大学生時代、近くの保育園でアルバイトをしていた。
園長先生をはじめどの先生方にもすごく熱意があり、素敵な保育園だった。
アルバイトをしていてふと、ぼく自身が保育園に通っていたころのことを思い出した。
その中でも強烈に記憶に残っていることがある。
誕生日会での一コマだ。

おそらくどこの保育園でも誕生日会が存在するだろう。
その月に誕生日を迎える子どもたちをまとめて祝う会だ。
保育園のホールにて誕生月の子たちは前のステージに並び、みんなからの祝福を受ける。
歌だったり、似顔絵だったり、画用紙で作った帽子だったり。
給食も誕生日メニューでちょっぴり豪華だったりね。

そんな一連のイベントの中に写真撮影があった。
主役の子どもたちがステージに並び、ポーズをとって記念撮影である。
たかが1、2分で済む撮影だが、ぼくが通っていたその保育園では、撮影中に主役以外の(つまりステージ下にいる)子どもたちは床に伏せて待たなければいけない、というルールがあった。
誕生日会の最中はゴザかなにかの上で体育座りをしているが、撮影中はみんながうずくまるように指示されるのである。
その理由はおそらく、顔を上げているとついつい主役の子たちの気が散ってしまうからだろう。
だとすれば、まあわからないでもない。
そしてもうひとつルールがあった。
それは撮影中しゃべってはいけない、ということである。
これも理由はわかる。
しゃべったり声をだしたりすると、主役の子どもたちが写真撮影に集中でいないからだ。
が、ぼくがずっとひっかかっているのは、撮影中に毎回先生がはなつセリフだ。
「おしゃべりすると写真に声が写っちゃうからしゃべらないでねー!」
えっ???
「おしゃべりすると写真に声が写っちゃうからしゃべらないでねー!」
「おしゃべりすると写真に声が写っちゃうからしゃべらないでねー!」
「おしゃべりすると写真に声が写っちゃうからしゃべらないでねー!」
な、なんだってー!?
どんな怪奇現象よそれ…声が写真に写る?アホか。
わかるよ?先生たちも深い意味があって言っているわけじゃなかっただろう。
「おしゃべりしている人がいると気が散っちゃうから静かにしてね」を、保育園児向けにコミカルに言ってみただけだろう。
だがしかし、はっきり言ってそんな子どもだまし―いやこの場合子どもですらも、だませていないわけだけれど―をやられると途端に興ざめだった。鼻白む。
なめたこと言ってくれるなあと、幼心ながらにモウレツに腹が立ったことを覚えている。

翻ってぼく自身、保育園でアルバイトをしてみて、ハッとしたことがある。
子どもたちに言うことをきかせたり、気をそらしたりするために、白々しいごまかしや他愛もない嘘をつこうとする自分がいたことである。
子どもって大人が思っているより(自分ごととして覚えているより)ずっと賢いし、大人の一挙手一投足を観察している。
“子どもだまし”でごまかそうなんていうのはとんでもなく失礼なことだ。
そんなこと自分が一番よくわかっているはずだったにと、はずかしく思った。

保育園のアルバイトは、大学のゼミの先輩の紹介でご縁あってはたらかせていただいたけれど、本当に得るものが多かった。
折に触れて保育園のアルバイトにまつわるエピソードも書いていきたいと思う。(了)

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