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ここからはじまる

何かがはじまる

『田舎=かやぶき屋根』という幻想

ぼくが生まれ育ったのは長野県の南に位置する小さな山村だった。

家から最寄り駅までは25kmくらい離れていたし、スーパーマーケットだって10kmほど行かないとたどり着けなかった。

そんな自分にとっては「都会」というものを具体的にイメージすることは到底不可能だった。

さすがに自分が住む場所を都会とは思えない。じゃあ都会ってなんだろう…。と、いまいちピンときていなかった。 

小学生だったぼくはある日父に

「田舎ってどんなところなの?」

とたずねたことがあった。

父は笑いながら

「お前が住むこの場所、こここそが正に田舎だよ」

と教えてくれた。

その答えはぼくにとってけっこうな衝撃であった。

当時のぼくが田舎と聞いて思い浮かべるのは、だだっ広い田んぼの中にかやぶき屋根の家屋が転々と建ち並んでいる風景…だった。日本昔ばなし然とした風景である。

田んぼこそあれど、ハウスメーカーが作るのっぺりとした現代的な家々が立ち並ぶ自分の住む場所が「田舎」だとは、これっぽっちも思わなかった。

――

そんな自分も今や東京都民となりき。

ふとした折に思い出した、幼少期の他愛もない記憶である。